商標登録は、原則として、早いもの勝ちです。だからといって、出願の目的や経緯をみてみると、仮に先に出願されたしても、その商標を登録することが、法秩序や社会道徳に照らして妥当ではないこともあります。このような出願を、一般に「悪意の出願」と呼んでいます。

例えば、仮に、「シャネル」が日本でまだ商標登録されていないとして、他人がこれを先取りして、シャネルの日本進出を妨害したり、商標を高額で売りつけようとするような行為を許してはいけないという価値観は、受け入れやすいのではないでしょうか。

あるいは、例えば「酒しか信じない」のような、インターネットで広く用いられるようになった言葉(「インターネット・ミーム」と呼ばれます)を誰かが商標登録して独占しようとする行為の妥当性も、見出すことができません。

残念ながら日本には、こうした出願をして、不当な方法であっても、自分ひとりが利益を受ければよいという人が、たくさんいます。こうした商標が登録されてしまった後には、異議申立や無効審判という手続きが用意されてはいますが、費用(印紙代)がかかることに加えて、制度上の理由から、潰すのが非常に難しいのが現状です。つまり、コストはかかるのになかなか潰せないわけです。

一方で、審査段階であれば、審査官に情報提供をすることで、効率よく悪意の出願を拒絶に追い込むことができます。しかも、情報提供には印紙代がかかりません。コストがかからないのに、比較的簡単に悪意出願を潰すことができるのです。

インターネット・ミームのような公共の財産と呼べる商標の悪意出願は、特定の誰かに損害が生じるわけではないので、費用をかけて弁理士に依頼するということが起こりづらいという問題があります。そこで、業界十年以上の経験をもつ、商標専門の弁理士が、無料で、情報提供を行うことにしました。社会の役に立つなどとおこがましいことを考えているわけではありません。ただ自分の専門知識を使って、多くの人とわいわい遊べたら楽しそうですし、その結果商標制度が少しでもよいものになるならば、とても嬉しいことだと思います。

こうした活動は、なかなか一人でできるものではないので、「こんな出願見つけたよ!」「この情報を証拠に使えない?」など、みなさんのお知恵をお借りしながら、ゲーム感覚で取り組んでいきたいと考えています。書類作成の過程は、原則として公開しています。あくまでも個人の趣味としての活動なので、作業はお酒を飲みながらのんびりやっています。ライトな気持ちで一緒に楽しんでいただけたら、私も嬉しいです。

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